【緊急報道】山火事被害で苦痛緩和のため オーストラリアでコアラ1100匹をヘリから射殺

オーストラリア南東部ビクトリア州当局は、3〜4月にかけて山火事で生存が難しくなった野生のコアラ約1100匹をヘリコプターから射殺しました。

州当局は「不要な苦痛を和らげるための安楽死措置」と説明していますが、動物保護団体からは「残酷な手法」との批判が上がっています。

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山火事の被害状況

ビクトリア州のブジビム国立公園では3月上旬に山火事が発生し、約2200ヘクタール(東京ドーム約470個分)の森林が焼失しました。

特にコアラの主食となるマンナガム(ユーカリの一種)の木が広範囲で失われ、多くのコアラが生存環境を失いました。

当局の対応と理由

ビクトリア州当局は「被災域の多くのコアラがやけどを負ったり、餌のユーカリ不足で飢えたりした」状況を受け、「生存の可能性は低く、苦痛を和らげる安楽死が必要だ」と判断。3月から4月下旬まで射殺を続けました。

州政府によると、ヘリコプターを使用したのは「火災の影響や険しい地形で地上からの接近が困難だった」ためで、処分対象のコアラについては「ヘリで30メートルの距離まで近づいて上から双眼鏡などで個別に観察し、状態を確認した上で安楽死の可否が判断された」としています。

批判の声

複数の動物保護団体は「残忍な方法で、決定過程が不透明」として第三者委員会による調査を要求。
団体「動物のための人道世界」は「射殺の規模や正当性に深刻な懸念がある」と指摘しています。

コアラ同盟のジェシカ・ロバートソン会長は「近接検査なしに、コアラが本当に末期状態にあるかどうかを知る方法はない」と述べ、ヘリコプターからの健康状態評価の正確性に疑問を呈しています。

コアラの状況

同州当局によると、州内のコアラ生息数は約46万匹と推定されています。
同州では絶滅危惧種に指定されていませんが、この数十年間に森林伐採が進み、生育環境が厳しくなったと専門家らは指摘しています。

一方で、オーストラリアの他の地域では状況が異なります。
2022年には、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア首都特別地域においてコアラは公式に絶滅危惧種に分類され、過去20年間でコアラの個体数は50%から62%も減少したと推定されています。

専門家の見解

コアラの専門家からは「火災規模と負傷程度を考慮すれば州政府の対応は正しかった」との意見がある一方で、ヘリからの狙撃による殺処分の正確性を疑問視する声や、コアラの救出や餌の供給といった代替手段を検討すべきだったとの指摘もあります。

獣医学的観点からは「安楽死とはQoL(生活の質)の尊重と動物福祉的観点から行われる処置」であり、「高確率で近々死んでしまう動物に対し、苦痛を長引かせず死に至らせるという行為は獣医療学的に適切」との見解もあります。

世論調査

この問題に関する世論調査では、「野生動物の保護のためにどのような介入が適切だと思いますか?」という質問に対し、「積極的な保護が必要」が47.4%、「必要な介入はやむを得ない」が23.1%、「最小限の干渉が良い」が18.2%、「放置すべき」が10%という結果になっています。(投票数:1,352票、統計に基づく世論調査ではありません)

この事件は、野生動物保護と人道的措置のバランス、自然災害に対する野生生物管理のあり方について、深い議論を投げかけています。

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