「天下一品」首都圏10店舗が6月末で一斉閉店へ
人気ラーメンチェーン「天下一品」の首都圏店舗が大規模な閉店ラッシュに直面しています。
東京、神奈川、埼玉の少なくとも10店舗が2025年6月30日で営業を終了することが明らかになりました。
この閉店により、首都圏に展開する店舗の約3割が姿を消すことになります。
閉店が明らかになったのは、渋谷店、新宿西口店、池袋西口店、田町店、目黒店、吉祥寺店、蒲田店、川崎店、大船店、大宮東口店の10店舗。
いずれも首都圏の主要駅や繁華街に位置する人気店舗です。
この突然の閉店発表を受け、SNS上では「#天一閉店」「#天一ロス」というハッシュタグとともに、惜しむ声が相次いでいます。
一部のファンからは「残念でしかない」「ファンとしては店舗大量閉店は悲しいニュースやね」といった声も寄せられています。
昨年に続く2回目の「閉店ラッシュ」
実は今回の閉店は、2024年6月にも同様の閉店ラッシュがあったことを踏まえると、2年連続の大規模閉店となります。昨年は歌舞伎町店、池袋東口店、恵比寿店、五反田店、八幡山店、多摩ニュータウン店など6店舗が閉店しました。
2年連続で首都圏の店舗が大量閉店する状況に、多くのファンが驚きと困惑を隠せない様子です。
天下一品とは?創業から半世紀の歴史を持つ「こってり」の先駆者
閉店の背景を理解するためには、まず「天下一品」とはどのようなラーメンチェーンなのかを知る必要があります。
京都発祥、独自の「こってりスープ」で全国展開
天下一品は1971年に京都で創業した中華そば専門店です。
創業者の木村勉氏が鶏ガラと野菜をじっくりと煮込んだ「こってりスープ」を生み出し、他のラーメン店には真似できない独自の味を確立しました。
創業者の木村勉氏は3年9か月もの歳月をかけて「こってりスープ」を完成させました。
こってりとした口当たりながらも、後味はすっきりとした、誰にも真似できないこのスープは、半世紀という長きにわたり、多くの人に愛され続けています。
「食べるスープ」というジャンルの開拓者
天下一品のスープは「鶏がら」が欠かせない要素で、1日に工場で使用する鶏がらの量は約16,000kgにも及びます。
じっくり時間をかけて炊き上げ、さらに野菜などを加えることで、深みがあり飽きのこないスープに仕上げています。
天下一品のスープは”飲むスープ”ではなく”食べるスープ”と表現されることもあり、その濃厚さが多くのファンを魅了してきました。
麺にしっかりと絡むスープの食感は、他のラーメン店にはない独自の体験を提供しています。
なぜ閉店ラッシュが起きているのか?背景と理由を徹底分析
天下一品の首都圏店舗が相次いで閉店する背景には、複数の要因が絡み合っていると考えられます。
運営会社の天一食品商事(滋賀県大津市)は閉店の理由について公式な説明を避けていますが、各種報道やSNS上の分析から、以下のような要因が指摘されています。
高い原価率がもたらす経営圧迫
天下一品の閉店の最大要因のひとつは「原価率の高さ」です。
こってりスープは鶏ガラと野菜を長時間炊き込む特殊製法で知られ、単価に対する原価負担が大きくなっています。
こってりスープを作るための原材料費と手間は一般的なラーメンと比較して高く、利益率を圧迫する要因となっています。
特に昨今の原材料費高騰の影響を受け、その経営負担はさらに増加しています。
都心一等地の高額な家賃負担
一等地に立地する店舗の「高額な家賃」も経営を圧迫する要因となっています。
天下一品は渋谷や新宿など首都圏の巨大ターミナル駅に多数出店していますが、こうした好立地の店舗ほど賃料負担が大きく、売上が少しでも鈍化すれば赤字になるリスクが高まります。
特にコロナ禍以降、オフィス街の人流が完全に回復していない地域では、高い固定費が経営を圧迫する要因となっています。
フランチャイズ契約の課題
2024年6月30日に6店舗が閉店した「天下一品」と同様に、今年閉店する店舗も特定のフランチャイジー企業が関わる店舗が中心のようです。
今回の閉店は天下一品全体の経営問題というよりも、特定のフランチャイズ加盟企業の事情による可能性が高いとの見方もあります。
閉店する店舗の多くは同一のフランチャイジー(FC契約企業)が運営していたとの情報もあります。
価格設定と競合店との関係
天下一品の「こってり(並)」は940円前後で提供されています。
これに対して「日高屋」の中華そばは420円、「幸楽苑」は490円など、リーズナブルな価格帯で勝負しているチェーンも多く存在します。
消費者の価格志向が強まる中、天下一品の価格設定が客離れを招いている可能性も指摘されています。
キャッシュレス対応の遅れ
天下一品では現金のみ対応という店舗が多く、キャッシュレス決済が普及する中で、若年層や訪日外国人観光客の需要を取りこぼしている面があります。
デジタル化が進む飲食業界において、現金決済のみの対応は特に若い世代や訪日外国人観光客の取り込みに不利に働いている可能性があります。
SNSで広がる「天一ロス」現象、ファンの反応は?
今回の閉店発表を受け、SNS上では「#天一閉店」「#天一ロス」といったハッシュタグとともに、多くのファンが惜しむ声を上げています。
惜しむ声が相次ぐSNSの反応
「残念でしかない」「ファンとしては店舗大量閉店は悲しいニュースやね」といった声が多く寄せられています。
中には「天一ロスで生きる意味がない」と冗談めかして極端な反応を示すユーザーもいるほど、天下一品は多くの熱狂的なファンを持つラーメンチェーンであることがうかがえます。
一方で、「高くなった」「もう無理」といった価格面への不満の声も見られ、消費者の価格志向の高まりが窺えます。
思い出語りに花が咲くSNS
Xでは230万インプレッションを超える投稿も見られ、「学生時代の思い出の味だった」「深夜にお世話になった」など、個人の思い出とともに綴られた投稿も少なくありません。
長年にわたって営業してきた店舗だけに、多くの人の思い出が詰まった場所としても惜しまれています。
今後の天下一品はどうなる?展望と課題
一部の店舗が閉店するとはいえ、天下一品は全国で209店舗を展開する大手チェーンです。
今後はどのような戦略で事業を展開していくのでしょうか。
地方店舗の強化と都市部の選別出店
今後、天一が目指すべきは「味はそのままに、運営構造を変える」道です。
デリバリー対応の再強化、地方型店舗の最適化、キャッシュレスの導入、小規模直営型モデルへの再編など、天一が唯一無二の”こってり文化”を次の時代にどう接続するかが注目されます。
都心の高コスト環境から地方都市への軸足移動や、収益性の高い店舗への経営資源集中などが今後の戦略となる可能性があります。
デジタル戦略の強化とサービス改革
キャッシュレス決済の導入やデリバリーサービスの強化など、現代の消費者ニーズに合わせたサービス改革も必要とされています。
こうした改革を通じて、伝統的な「こってり文化」を次世代に継承していくことが課題です。
まとめ:変わりゆく外食産業と天下一品の挑戦
天下一品の首都圏店舗閉店は、単なる一企業の経営問題ではなく、外食産業全体が直面する構造的な課題を映し出しています。
原材料費の高騰、人件費の上昇、消費者の嗜好変化、デジタル化の波など、ラーメン業界を取り巻く環境は大きく変化しています。
天下一品がその独自の「こってりスープ」の伝統を守りながら、どのように新時代に適応していくのか、今後の展開が注目されます。
一方で、閉店する店舗の常連客にとっては残念なニュースであり、6月30日までの期間に最後の「こってり」を楽しもうという動きも見られます。
創業から半世紀以上の歴史を持つ天下一品が、この困難な時期をどのように乗り越え、次の50年に向けた挑戦を続けていくのか、その姿を見守りたいと思います。
【閉店店舗一覧】
- 渋谷店
- 新宿西口店
- 池袋西口店
- 田町店
- 目黒店
- 吉祥寺店
- 蒲田店
- 川崎店
- 大船店
- 大宮東口店